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第10章 番外編【櫻の系譜・弐～水面の月－高嶺桜－】　壱―お千世　　　

　咲き誇る桜の下で、お千世は男に抱かれた。月と花だけがほの白く宵闇に浮かぶお千世の裸身を静かに見下ろしていた。お千世の身体は、清らかで儚げで、ひっそりと夜陰に花開く桜の花にも似ていた。
　男はあるときは信じられないほどの猛々しさで、あるときには労りの込もった優しさでお千世を幾度も抱いた。男と出逢って以来、お千世はいつも茫として心ここにあらずといった体であった。