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蜜愛~男になった女~
第10章 番外編【櫻の系譜・弐~水面の月-高嶺桜-】 壱―お千世   
 元々、寡黙で何を考えているのか判らぬ娘であったのが、更に口数が減り、眼差しもどこか虚ろになった。奧御殿での奉公の最中も些細な粗相が目立つようになり、老女の更科に声を荒げて叱責されることが多くなった。
「そのお茶は畏れ多くも殿にお持ちするものであったのですぞ? もし、御前でかような粗相を致したのであったれば、何とするつもりぞ」
 更科は語気も鋭く言うと、放心したように割れた茶碗を見ているお千世に吐息をつき顎をしゃくった。
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