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第11章 番外編【櫻の系譜・弐～水面の月－高嶺桜－】　弐―加恵　　　　

　その台詞に、加恵は胸をつかれた。お千世が正式な側室として認められた日は、信純が彼女への興味を失った日でもあった。信純にとって、お千世は束の間の逢瀬を愉しむためだけの恋人にすぎず、非日常から脱却して日常の世界に戻れば、彼を十分に愉しませる美しき側妾たちが揃っているのだ。
　お千世が信純の寵を失ったことは明らかであり、それなのに、今もなお不実な男を信じ続けているお千世の姿に加恵は憐憫の情を感じずにはいられない。