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蜜愛~男になった女~
第11章 番外編【櫻の系譜・弐~水面の月-高嶺桜-】 弐―加恵
お千世が河北城の片隅で人知れずひっそりと短い一生を終えたそのひと月後。
一人の若い僧が河北藩を発っていった。網代笠を目深に被った俊麗な僧侶の墨染の衣の懐深く布にくるまれたひと房の髪の毛がおさめられていた。その女人の髪の毛こそ、お千世の最期を看取った加恵からお千世の許婚者高田雄次郎に託されたものであった。
お千世の死を知った雄次郎は剃髪して僧となり、当て所(ど)のない葬いの旅へと出ることを選んだのである。その後の雄次郎の消息を知る者は誰もいない。
一人の若い僧が河北藩を発っていった。網代笠を目深に被った俊麗な僧侶の墨染の衣の懐深く布にくるまれたひと房の髪の毛がおさめられていた。その女人の髪の毛こそ、お千世の最期を看取った加恵からお千世の許婚者高田雄次郎に託されたものであった。
お千世の死を知った雄次郎は剃髪して僧となり、当て所(ど)のない葬いの旅へと出ることを選んだのである。その後の雄次郎の消息を知る者は誰もいない。