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第12章 番外編【櫻の系譜・参～花水木（はなみずき）～】　　

　やわらかな風が頬を撫でて通りすぎてゆく。聡一郎は上向けていた視線をそっと降ろし、小さな吐息を洩らした。この北方の小藩河北の地においても今は春の盛りであった。聡一郎は河北藩主佐伯信頼に仕える近習であり、信頼の第一の従者とも云われている。代々、佐伯氏の居城である河北城に初めて上がり主の信頼にお目見えしたのは六歳のまだ前髪立ちの童の頃であった。