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第2章 第一部【白桜記】　其の一・高嶺桜

―主よ。私はやはりここで生きてゆかなければならないのでしょうか。
　着物の下に隠れた十字架(クルス)を握りしめ、おさとの方は心の中の神に問わずにはいられなかった。
　夜陰にひっそりと浮かび上がる白い花を月が照らしている。派手やかな八重桜は満開でありながら、どこか物哀しさすら漂わせている。おさとの方は瞬きもせず、白い花を見つめた。夜はあまりにも深く、永遠に明けぬように思われた。