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蜜愛~男になった女~
第2章 第一部【白桜記】 其の一・高嶺桜
その翌日。
おさとの方は朝から縁に座って桜を眺めていた。
朝餉も殆ど手を付けず放心したようにずっと庭ばかりに虚ろな眼差しを向けるおさとの方を腰元たちは気遣わしげに見て、顔を見合わせた。女ながらも生まれたときから男として育ち、いずれは家老になるべき身であったのだ―、それを突如として側妾として召し上げられては、気鬱のあまり正気を手放してしまったとしても不思議はないと、誰もがおさとの方の悲運には同情的ではあった。