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蜜愛~男になった女~
第2章 第一部【白桜記】 其の一・高嶺桜
 手付かずのままの朝の膳を腰元が下げていったのを見届け、おさとの方は再び茫とした視線を庭に投げた。山奥の桜もかなりの樹齢を経た古樹であったけれど、この庭の桜も相当に古そうだ。
 夕べはどこか淋しげに見えた桜もこうして明るい朝の光の下で見れば、やはり桜本来の華やかな美しさが際立っている。雲一つない真っ青な空から降り落ちてくる陽光を浴びて、桜の樹の影が黒く地に落ちていた。はんなりと色づいた花びらを風に震わせ、震える度に花びらが陽光を弾く。
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