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カクテル好きの男たち
第10章 電気工事の男
店に一歩足を踏み入れると
ムアッとした空気が身体にまとわりつく。
「本当に蒸し風呂だわ」
ドアを開けて換気扇を回したところで
焼け石に水で
まったく室温は変わらない。
「そうだ、業者の方が来るまで
少しお掃除をしておこうかしら」
ホコリまみれのエアコンを修理してもらうのも
なんだか気が引けるので
珠代は脚立を取り出してエアコンを拭きはじめた。
慣れない脚立に昇ったので
珠代はうっかりバランスを崩した。
「きゃっ!」
脚を踏み外して脚立から落ちる寸前、
男の手が珠代の体を支えた。
「危ないですよ、気をつけて」
助かったのはいいけれど、
男の手はしっかりと珠代の尻を抱いていた。
「ありがとうございます」
脚立から落ちる恐怖感より
男に尻を触られていることが恥ずかしくて
珠代は思わず赤面した。
「1メートルほどの高さだと侮ってはいけません
私たちでさえもうっかり落ちて
骨折したりするんですから」
「あの…どちら様?」
「あ、申し遅れました
私、坂崎電気工事の坂崎と申します」
挨拶をしてくれるのはいいけれど
男の手は、いつまでも珠代の尻を支えていた。
「あの…もう、大丈夫ですから」
「そうですか、では、ゆっくりと降りてください」
そう言って坂崎はさりげなく手を差し出した。
振り払うのも失礼なので
珠代はしっかりと坂崎の手を握りしめた。