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カクテル好きの男たち
第10章 電気工事の男

坂崎はてきぱきとエアコンを修理してくれた。

「奥さん、これはガスが抜けてるよ」

「ガス?」

「ええ、エアコンにとってガスは命ですからね
これじゃあ、いくら稼働させても冷えない訳だ」

ガスをチャージしておきますね

そう言って坂崎は代替フロンを充填した。

「もう大丈夫だと思いますよ」

では、作業確認のサインをお願いします
そう言って坂崎は工事確認書を取り出した。

珠代が署名するのを見ながら
「へえ~、珠代さんというのか…
古風でいい名前ですね」
坂崎に誉められて珠代は赤面した。

古めかしい名前だと笑われる事はあっても
こうしていい名前だと誉められた事がなかった。

今日一日、暑い室内を何軒も作業してきたのか
坂崎の体臭はかなりのものだったが
珠代は男の汗臭い体臭が好きな女だったので
こうして近くにいても苦にならない。
いや、苦にならないどころか
その汗臭い臭いで珠代の官能がうち震えていた。

「あの…
こうして時間外で作業をしてくれたお礼に
何か冷たいものでもお召し上がりになります?」

「そうですか?ありがたいなあ…
では、冷たい水を一杯だけ貰おうかな」

珠代が冷えた水を差し出すと
坂崎はゴクッグクっと喉を鳴らしながら
それを一気に飲み干した。

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