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カクテル好きの男たち
第2章 最初のお客さま

「コホン!」

いつまでも珠代と香川が見つめあっているので
焦れた豊田礼二が咳払いをして
「僕にも似合うカクテルを早く作ってくれないか」
そう言って珠代を急かした。

「あら、ごめんなさいね」

あなたには…

「ジントニックよ」

「なんだ、僕にはありきたりのカクテルなんだな」

目新しいカクテルを想像していたのか
定番のカクテルに豊田はがっかりした顔をした。

「カクテル言葉は…
強い意志、いつも希望を捨てない貴方へ…よ」

「強い意思…
そうね、礼二ったら白バイ隊員の試験を
何度も落ちているのに諦めないものね」

「何度も落ちていないよ!
たった三回だ!」

良美が囃し立てると、
冗談なのに真に受けて豊田は良美を睨んだ。

「まあまあ…
喧嘩するほど仲が良いと言いますものね」

珠代がとりなしても
二人は目を合わさずにそっぽを向いていた。

「この二人はいつもこんな調子なんですよ
放っておけばすぐに仲直りしますよ」

「あら、そうなの?
じゃあ、そちらのソファに仲良く座って
早く仲直りしちゃいなさいよ」

喧嘩の相手は真っ平だと
珠代は二人をソファに座らせた。

「邪魔者がいなくなりましたね」

カウンターに一人っきりになると
香川は珠代の手を握ってきた。

「まあ!こんなおばさんを口説いてくれるの?」

ずっとオーナーマスターの屋敷で
家政婦同様の生活をしてきただけに
こうして男に口説かれることを
珠代は心から楽しんだ。


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