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カクテル好きの男たち
第1章 女性バーテンダー誕生
法要を終えて
秀一と珠代の夫婦は帰り道を急いでいた。
「思っている以上に時間がかかったね」
「あなた、ちょっと待ってよ!
歩くのが早いわ」
のんびりした性格の珠代と
短気で忙しない秀一…
どう考えても不釣り合いな二人なのだが
これまた夜になると息がぴったり合って
体の相性が抜群なのだから
男と女というものはわからないものだ。
「ほら見ろ、
早く歩かないから信号が赤になっちまったよ」
たかが一分ぐらいどうってことないじゃない
秀一は「早く青になれ、青になれ」と
その場で足踏みさえする始末だ。
「そんなに慌てなくても
バーの開店時間を少し遅らせばいいじゃない」
と言うよりも
なにも法事がある今日ぐらい
お店を閉めてもいいのにと珠代が愚痴をこぼすと
「あんなバーでも寄ってくれる客がいるんだ
そういう人たちのために年中無休を貫きたいのさ」
真面目に答える秀一だったが
『嘘おっしゃい…
隙あらば女性客を抱きたいだけでしょ』と
珠代は心の中で秀一にイヤミを言った。
「おっ!信号が青になった。
さあ、渡ろうぜ」
二人は交差点を渡り始めた。
一台の車が二人に近づいてくる。
信号が赤なのだから
減速して停車するだろうと思いきや
反対に急加速して横断歩道を渡る二人に迫ってきた
「えっ?」
「嘘っ!」
人間は、いざという時に体が固まってしまい
咄嗟の行動に出ることが出来ない。