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カクテル好きの男たち
第8章 作業療法士の女
「1…2…3…4…」
テニスの軟式ボールを握っては離し
また握っては離し…
毎日毎日、こういうことの繰り返しだ。
これをしたからといって
指の痺れが取れるわけでもない。
退屈な動作の繰り返しに
秀一はあくびを噛み殺しながら
トレーニングに力が入らない。
「秀一さん、頑張らないと」
作業療法士の遥が
秀一を激励してくれるが
目に見えて回復してこないだけに
秀一としてもトレーニングに力が入らない。
「痺れは一生治らないかもと
担当医が言ってましたからね
こんなことをするだけ無駄ですよ」
「無駄じゃないわ
もう無理だからとトレーニングをやめたら
どんどん筋力が落ちて
それこそ痺れるだけでなく動かなくなりますよ」
ほら、もっと頑張りましょうよ
せめて1ヶ月…ううん、半月は頑張って欲しいかな
「だからね
こんなボールじゃなくて
君のおっぱいなら、いくらでも揉めると思うんだ」
「またまた、そんなことを言ってぇ~
私は『ムギュ~っ』てされるのが好きなの
今の秀一さんの握力だと
私、全然気持ちよくならないわ」
「くそっ、
人を魅力のない男みたいに言いやがって」
「頑張って握力が戻ったら
いくらでも揉ませてあげるわよ」
「本当かい?」
「本当よ、だから半月は続けて
トレーニングしましょうよ」
秀一にやる気を出させる方便だとわかっていても
そうやって目標を掲げてもらうと
秀一もやる気が出てくる。