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カクテル好きの男たち
第9章 白バイ野郎

その夜は雨がシトシト降っていた。

ただでさえ客足の少ないバーなのだから
天気が悪いとお客など来るはずもなかった。

「いつもの事だけど…
今夜も開店休業ね」

店じまいをしようと
カウンターから抜け出すと
時、同じくして
店のドアが開いた。

「あら、いらっしゃいませ」

バーにやってきたのは
初日に婦警の相川が引き連れてきた
二人の警官のうちの一人、豊田だった。

「あら?豊田さん、また来てくれたのね」

「えっ?覚えていてくれたんですか?」

いつにも増して厳しい表情だった豊田は
一度来店しただけなのに
自分の名前を覚えてくれていた事に感激した。

忘れようにも忘れなれなかった。

開店早々に相川が二人の男性を連れてきて
何だかんだと言うまに
二対二の乱痴気騒ぎになったのだから。

「その後、相川さんとは進展があった?」

相思相愛の二人なのだから
婚約したものだと思って
珠代はさりげなく話題にしてみた。

途端に豊田の顔が
バーにやってきた時と同じように曇った。

「あら?上手く行ってないの?」

まあまあ、立ち話もなんだし
こっちへ来てお座りなさいよと
珠代はカウンター席を指差した。

豊田は表情と同じように
重い足取りでカウンターに着席した。


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