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末に吉をあげる
第2章 書かされた約束
「軽蔑した?」
「えっ」
あからさまに苦く眼を歪ませる瑞希に、溜め息を吐いて眼を逸らした。
「僕の三倍くらいの歳の男が瑞希とヤるって置き換えて想像でもした? 嫌悪感が相手にまで伝わってたよ」
「俺はそんな……いえ。そうかもです」
上昇する狭い密室の空気が下に圧迫される。
「でも俺、先生があの歳でも構わないですけど」
言い終わるや否や、開いた扉から飛び出して部屋に向かう。
なにその捨て台詞。
笑いそうになる口を手で押さえて、廊下に踏み出した。
ふわりと、足裏を包む感触が非現実感を逆撫でして去っていく。
髪の先が首筋に当たるのが気になるのは、随分敏感にさせられているからだろう。
ここの設計士は筋金入りの変態だ。
部屋の鍵を開けて、瑞希を通してやる。
すぐに立ち止まったのは、知らない世界のせいだろう。
壁に丁寧に陳列された器具。
ベッドのシーツは漆黒で、赤の緩やかなラインが床に消えるように刻まれている。
照明は黄色く、異様な空間を際立たせている。
オートロックの機械音だけが響いた。
振り向いた瑞希は、不安げに服の裾を握り締めた。
「……痛いことするんですか」
上擦った声に色濃く恐怖が滲む。
そういう態度は逆効果なんだけど。
無表情で瑞希に近づき、鎖骨をなぞりながらシャツのボタンを外して下にずらしていく。
「せん、せ……待って」
尚も無言のまま服を床に落として、半裸の瑞希を放置して、並んだ器具の元に足を運ぶ。
腕を痛めない革の手錠、柔らかな毛を使った鞭、ロープに首輪。
圧巻なほどのコレクションに、目移りしてしまう。
後ろの瑞希に笑いかける。
「どれがいい?」
見開いた眼は、ただただ困惑に揺れて、唇は微動だにしない。
一瞬視線が向けられたのは、窓の近くに設置されていたラブチェア。
流石に実物を見るのは初めてで、ピンク色の派手なカバーと複雑な器具に興味が引かれた。
「え、なんですか……それ」
おどおどと近づく瑞希が警戒心を見せる。
「んー……まだ必要ないとは思うんだけど。全自動マシンて言えばいいかな。勝手に動かしてくれる」
「な、なにを?」
顔を赤くして想像する瑞希に良いことを思い付いた。
折角だ。
高級品を楽しませてもらってもバチは当たらないだろう。