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第1章 蟲に溺れる
そこに集まる人間は実に様々。名の知れた人間からそうでない者、聖職とよばれる職種の者もいた。
成人していることと主催者に認められること以外に制約はない。
そんなパーティーの従業員はこのパーティーにおける自分の役割を皆よく理解しており、皆優秀だ。
警備員に事務、ルームメイク、簡単な調理もやるらしい。というのは、一度使用人の男と褥を共にしたことがあったのだ。彼は自分の知る寝技や道具、生き物を使った遊戯について興味深い話をしてくれた。蛇の道は蛇──深い欲望と経験が彼等を一流足らしめているのだ。

(彼等ならあの蟲について、何か知っているかもしれないわ。)

私はゆっくり朝食を堪能しながら、あのギョロギョロした目の、若い男の事を考えた。

私は朝食を済ませ歯を磨くと、片付けのお願いをフロントに伝えた。どうやら若い男の他に従業員はいないらしく、数分後またあの若い男がカートを押して入ってきた。
手際よくテーブルを片付けると、紅茶の入ったポットとカップ、メレンゲの入った篭を置いた。

「ありがとう。これはあなたが焼いたものかしら?」

「…これも、朝食も俺が。お気にめしましたか?」

「ええ、とても。…どうかしら、もしあなたがよろしいなら、お茶に付き合って下さらない?」

男は眼を一層ギョロつかせながら目礼をすると、私の向いの椅子に腰かけ、カートに備えてあるカップを一応自分の前に置いた。

「…先に言っとくけど、俺は朝のあんたを見てるよ。」

「知ってるわ。」

若い男は少し顔をあげ、熱のこもった視線を向けてきた。

「入ってくるときもフロントで見てる。」

「そう。」

「まさかあんな男と寝るとはね。」

「彼、私の知らないことを知っているの。燃えたわ」

「…。あんた、不思議な匂いがするよ。」

「へぇ、不思議な事を言うのね。」

私は頬杖をついて男の方に身を乗り出すと、さも興味深げに微笑む。若い男は私と視線をかち合わせニヤッと笑った。手を伸ばせば簡単に届く距離に、心地よい緊張が走る。

…なぜだろう、さっきから身体がじわりじわりと熱を持ち始めている。昨日のことで疲れていたのに、情欲は湧水のように止めどなく溢れ出してきていた。
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