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匣
第3章 影のないひと
影のないひとがいた。
それはそれは美しい人だった。
影のない美しい人はあちこちよく歩いた。
影があった頃、美しい人は森、街、海を歩き、
たくさんのきれいなものを心に拾っていた。
いつも悪いやつがそれを見ていた。
悪いやつは美しい人が欲しくて焦がれて堪らなかった。
悪いやつはある日美しい人に愛を告げた。
美しい人は困って微笑むばかりで、
悪いやつのものになろうとしなかった。
悪いやつは嘆いた。哀しみ吠えて、吼えて震えて、そのうちもっと悪いやつになっていった。
悪いやつは隣の家のこどもを唆し、
美しい人と縄跳びをさせた。
美しい人が跳ねるたびに影が束の間離れる。
スカートが揺れて、笑う声が乱れる。
影が五度目に離れたとき、
悪いやつは影を抱き上げ、そのまま船で遠くの街まで逃げてしまった。
それはそれは美しい人だった。
影のない美しい人はあちこちよく歩いた。
影があった頃、美しい人は森、街、海を歩き、
たくさんのきれいなものを心に拾っていた。
いつも悪いやつがそれを見ていた。
悪いやつは美しい人が欲しくて焦がれて堪らなかった。
悪いやつはある日美しい人に愛を告げた。
美しい人は困って微笑むばかりで、
悪いやつのものになろうとしなかった。
悪いやつは嘆いた。哀しみ吠えて、吼えて震えて、そのうちもっと悪いやつになっていった。
悪いやつは隣の家のこどもを唆し、
美しい人と縄跳びをさせた。
美しい人が跳ねるたびに影が束の間離れる。
スカートが揺れて、笑う声が乱れる。
影が五度目に離れたとき、
悪いやつは影を抱き上げ、そのまま船で遠くの街まで逃げてしまった。