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匣
第3章 影のないひと
"美しい人"
"影のない人"
夜は囁き、影のない美しい人の身体を
自分の中に取り込んだ。
影のない人は夜に溺れた。
あらゆるところから夜が入り込んできて、
影のない人の影になろうと
隙間を優しくなぞっていった。
夜は影のない人の穴に入り込んだ。そこは影であるはずなのに影でなかった。
ただただ、影のない人は啼いた。
啼いた口から夜が入り込む。
押しても引いても、噛んでも掻いても
影は傷付かず、切ってもひとつ影が増えるだけ。
影のない人は夜に揉みしだかれるまま、
撫でられるまま、打たれるまま、擦られるまま、
陽が昇るまで啼いた。
"影のない人"
夜は囁き、影のない美しい人の身体を
自分の中に取り込んだ。
影のない人は夜に溺れた。
あらゆるところから夜が入り込んできて、
影のない人の影になろうと
隙間を優しくなぞっていった。
夜は影のない人の穴に入り込んだ。そこは影であるはずなのに影でなかった。
ただただ、影のない人は啼いた。
啼いた口から夜が入り込む。
押しても引いても、噛んでも掻いても
影は傷付かず、切ってもひとつ影が増えるだけ。
影のない人は夜に揉みしだかれるまま、
撫でられるまま、打たれるまま、擦られるまま、
陽が昇るまで啼いた。