この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
匣
第3章 影のないひと
影のない人の影は悪いやつの家の鏡に貼り付けられた。
悪いやつは朝も昼も明かりを灯し、
影のない人の影を濃く逃げられないようにした。
影のない人の影は美しい影だった。
悪いやつは美しい影を愛した。
美しい影には声がない。
美しい影には口も、耳も、目も鼻もない。
美しい影に在るのは輪郭と闇だけだった。
悪いやつは美しい影の輪郭を舐めて噛んで咬みちぎって吐いて、身体を埋めて埋もれて埋めて愛した。
美しい影は逃げ出そうともがいた。
美しい影は影のない人が啼いているのがわかった。
夜が美しい影のない人の中に出て入るのがわかった。
影のない人の影には美しい影以外なれなかった。
悪いやつは美しい影を愛した。
毎日美しい影を愛した。
美しい影は悪いやつにバラバラにされて、口に入れられ、吐き出され、瓶に詰められ、巻き付かされ、
様々に愛された。
美しい影は光の下で直ぐ輪郭を取り戻す。
美しい影は無い声で啼き、無い目で泣き、無い水を溢れさせ、毎日愛されていた。
悪いやつは朝も昼も明かりを灯し、
影のない人の影を濃く逃げられないようにした。
影のない人の影は美しい影だった。
悪いやつは美しい影を愛した。
美しい影には声がない。
美しい影には口も、耳も、目も鼻もない。
美しい影に在るのは輪郭と闇だけだった。
悪いやつは美しい影の輪郭を舐めて噛んで咬みちぎって吐いて、身体を埋めて埋もれて埋めて愛した。
美しい影は逃げ出そうともがいた。
美しい影は影のない人が啼いているのがわかった。
夜が美しい影のない人の中に出て入るのがわかった。
影のない人の影には美しい影以外なれなかった。
悪いやつは美しい影を愛した。
毎日美しい影を愛した。
美しい影は悪いやつにバラバラにされて、口に入れられ、吐き出され、瓶に詰められ、巻き付かされ、
様々に愛された。
美しい影は光の下で直ぐ輪郭を取り戻す。
美しい影は無い声で啼き、無い目で泣き、無い水を溢れさせ、毎日愛されていた。