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第1章 蟲に溺れる
「私、何度もベッドでお願いする男、嫌いよ。」

私はぎっと男を睨み、男の肩に軽く爪を立てた。
──美しい女の、心からの侮蔑を孕む醒めた瞳。そしてその強い眼力に男はぞくりと背を震わせた。

「そうだね、でもきみ。僕たち二人は共通の目的で繋がっているはずだよ。ベッドの中でしかわからない、男と女が二人で昇る高みへの欲望。…いや、劣情かしら。ねえきみ、そのために僕が絶対きみを裏切らないとわかるだろう?」

私は男の瞳に宿る暗く鋭い鬼火のような輝きを見た。それは私の心の暗闇と通じていて、心を締め付け、身体を悦ばせた。孤独な"快感至上主義者"たちの、それは退廃的な信頼だった。

「…いいわ。言われた通り、蟲を宿すわ。だからもう、不粋な話はおわりにしましょ…。」

「…そうこなくっちゃ。」

それが交渉成立の儀式であるかのように、私たちは長いこと熱いキスをした。そして、互いに熱が最高潮に達したところで激しく腰を動かし始める。
胸の蟲はまた一回り大きくなり、どうやら私の母乳を吸いあげているらしく、身体はすこし乳白色に変化していた。
男は私の両方の胸を寄せて揉み上げる。そのたび私は絶頂に達したが、男の狙いはそれだけではなかった。

「あん!あ、あ、ぃや、まさか…あん、いゃ、ぁあん!」

隣り合わせに並んだ乳首と滴る母乳。蟲は目敏くそれを嗅ぎとり、するすると2本目の長い触手を伸ばして零れた母乳を吸い始める。触手は段々と乳首に吸い寄せられ、ついに乳首の穴へと潜り込んだ。

「───っあハ!」

私は視界をチカチカさせながら絶頂の荒波に揉まれていた。男が苦しげに腰を打ち付け、その度に意識が揺さぶられる。最早膣はとろとろ、突き上げる男の形に成ってしまっている。男を悦ばせ、男の突くところが性感帯になり、男を締め付けるために筋肉が総動員している。
まるで、身体の内側を蟲に操られているみたい…。

「ああ!イく!出すよぉ!」

男がそう言って大きくのけぞったとき、私は盛大に潮を吹いて絶頂にのぼり詰めた。いや、ずっと溢れていただろう。水の抜けた身体へ男の精液が染み込んでいく。
見た目はただのセックスだけど、これは立派な暴力だった。私は打ちのめされた獲物のように髪を撫でる男の手を受け入れた。
私は襲いくる睡魔へドロドロの身体を任せ、静かに闇の苗床へ潜り込んでいった。
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