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第1章 蟲に溺れる
私は朝、どんなに身体が疲れていても二度寝が出来ない。日曜の朝だというのに8時をまたぐことはなく、今日もノロノロと身体を起こしてベッドの縁に腰かけていた。
髪はそのままだったけど身体は綺麗に拭かれたようで、昨日男がなめ回したところも、放った精子や母乳が伝ったところもさっぱりしていた。ベッドのシーツまで変えられている。
けれど私は覚えている。──というより夢で見たような感覚だが──
男は私を湿った暖かなタオルで拭く前に、私のあらゆるところを舐め、咬み、吸っていたのだ。男は犬がするみたく唇や鼻を舐め、内腿や背中、腕や首を咬み、クリトリスやアナル、何より、母乳をずっと吸っていた。

(やはりあれは、夢じゃなかったのね…)

男は玩具のように私をいじり回しながらも、生まれたての嬰児を拭くように優しく私を拭いていった。そして糸の切れた人形よろしく身体が意識に反して全く動かない中で、男の好きにされる自分の肉体を見ることは、私に倒錯した仄暗い愉悦をもたらしていた。

ベッドのシーツを変えたのは男とは別の人間だったのも覚えている。朝の早い時間に男は私をローブで包み、抱きかかえたままルームクリーニングを呼んだのだ。ルームクリーニングをする恐らく若い男と、私を抱えた男はなにも言葉を交わさずにいた。
でも私の耳元に唇を寄せ、男は微睡む私に耳打ちをした。

『ごらん、昨日撒き散らした君の潮がたっぷり染みたシーツを、彼が今張り替えているよ。』

『イヤらしい匂いのシーツ、ほら、子供のお漏らしみたいに地図が出来ているね。』

『恥ずかしいね、きみ。きみみたいに妙齢の美しい婦人が、遊び知らずの少女みたいに潮を撒き散らして、今もぐっすり眠っているなんてさ。』

『ほら、あの男。君のシーツを片付けながら、眠る君のよがる様を想像して、股間をはち切れんばかりに張りつめさせているよ。』
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