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匣
第1章 蟲に溺れる
「きみ、よーく眠っていたね。昨日から、僕はきみとのことですっかり満たされているよ。」
「部屋はきみの好きなときに出ていってくれて構わない。食事のことも部屋のことも"あの男"によろしく言ってあるから、まずはフロントに言ってくれ。」
「あと、クローゼットにプレゼントを置いておいた。それを着た君に早く会いたい。」
"あの男"とは今朝この部屋を片付けた、若い男のことだろう。全くいやみなやつだ。
クローゼットには小さな二つの瓶と、ベネックス・ブルーを彷彿とさせるロンググローブが入っていた。試しにはめてみると、着けていた方がしっくりくるほど裸の私とよく馴染んでいる。肌にシルクの光沢が映え、乳首の赤味をより瑞々しく見せた。
あの男らしい、偏執な贈り物だわ。この瓶も…。
私は、そっと瓶のひとつを持ち上げてみた。
中には昨晩、私の身体を男に屈服させる片棒を担いだ、憎いあの蟲が入っていた。この蟲も確かに透明だが、水が足りていないのか一回り小さく、固めたゼラチンを砕いたように表面がボコボコしていた。
私は昨日の身体の限界を超えるような快感を思い出す。これを生殖器である膣にいれたなら、一体どんな快感が自分を襲うのだろう。
一度、昨晩を思い出すように自分の胸をやんわり揉んでみた。昨晩程ではないが暖かな快楽が身体の芯を駆け抜け、母乳もじわりとにじみ出る。どういう仕組みか、恐らくホルモンバランスを操作したのだろう。
(でも、明日にはおさまりそう)
いずれ収まるものなのだと分かり、都合のよさに感心をした。
起きてから一時間が過ぎている。このまま帰って朝昼兼用の食事を取るのもいいが、身体がだるいこともありここで食事を済ませてしまうことにした。
私はローブを羽織ると、内線でフロントにコールした。
「…はい、こちらフロント。」
酷薄そうな男の、低い鼻声が聞こえてきた。これがあの若い男の声だろうか。耳障りの良い、落ち着いた低い声だ。
「食事をお願いしたいの。軽くでいいわ。」
それから軽くメニューのやり取りをすると私は男との会話を終えた。私はぼんやり窓の外を眺め、あの蟲をいつ中に迎え入れるかを考えていた。日取り的には今日がいい。けれど、あの男と寝てみて私は男のことを心底軽蔑してしまっていた。
「部屋はきみの好きなときに出ていってくれて構わない。食事のことも部屋のことも"あの男"によろしく言ってあるから、まずはフロントに言ってくれ。」
「あと、クローゼットにプレゼントを置いておいた。それを着た君に早く会いたい。」
"あの男"とは今朝この部屋を片付けた、若い男のことだろう。全くいやみなやつだ。
クローゼットには小さな二つの瓶と、ベネックス・ブルーを彷彿とさせるロンググローブが入っていた。試しにはめてみると、着けていた方がしっくりくるほど裸の私とよく馴染んでいる。肌にシルクの光沢が映え、乳首の赤味をより瑞々しく見せた。
あの男らしい、偏執な贈り物だわ。この瓶も…。
私は、そっと瓶のひとつを持ち上げてみた。
中には昨晩、私の身体を男に屈服させる片棒を担いだ、憎いあの蟲が入っていた。この蟲も確かに透明だが、水が足りていないのか一回り小さく、固めたゼラチンを砕いたように表面がボコボコしていた。
私は昨日の身体の限界を超えるような快感を思い出す。これを生殖器である膣にいれたなら、一体どんな快感が自分を襲うのだろう。
一度、昨晩を思い出すように自分の胸をやんわり揉んでみた。昨晩程ではないが暖かな快楽が身体の芯を駆け抜け、母乳もじわりとにじみ出る。どういう仕組みか、恐らくホルモンバランスを操作したのだろう。
(でも、明日にはおさまりそう)
いずれ収まるものなのだと分かり、都合のよさに感心をした。
起きてから一時間が過ぎている。このまま帰って朝昼兼用の食事を取るのもいいが、身体がだるいこともありここで食事を済ませてしまうことにした。
私はローブを羽織ると、内線でフロントにコールした。
「…はい、こちらフロント。」
酷薄そうな男の、低い鼻声が聞こえてきた。これがあの若い男の声だろうか。耳障りの良い、落ち着いた低い声だ。
「食事をお願いしたいの。軽くでいいわ。」
それから軽くメニューのやり取りをすると私は男との会話を終えた。私はぼんやり窓の外を眺め、あの蟲をいつ中に迎え入れるかを考えていた。日取り的には今日がいい。けれど、あの男と寝てみて私は男のことを心底軽蔑してしまっていた。