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濡華 ~妹、涼華の過去~
第2章 ロストバージン
芹沢は涼華を見送ると電話をかけていた。

「あぁ、俺だ…言われた通り相手をしてきたぞ…。どんなだったかって?…ありゃ、大化けするかもしれないな…最初からヒィんヒィん喘いでいたよ…。俺もまた誘いたいもんだ…。おっと、解ってるって…深入りしたらこちらの身が危ういからな…あぁ…あぁ…じゃあな…」

【生でやりたかったが…まぁ、仕方ないか…】

涼華の消えた方を見つめそう思いもしたが、諦めるように溜め息をつくと車を出した。


翌日の放課後、涼華は杏奈達とファミレスでたむろっていた。
隣に座る杏奈が顔を寄せて話しかけてくる。

「涼華…それで卒業できたの……」

「卒業って、大げさだよ……ちょっと痛かったけど…まぁ、なんとかね……」

「そっか…じゃ、こっちの世界にもデビューだね……」

「まぁ……でも、ほんとに大丈夫なんだよね……」

処女じゃなくなったとはいえ、知らない男に抱かれるのはやはり怖かった。

「大丈夫だよ…私の客は皆さん紳士揃いだからね…無茶は言わないよ……まぁ、交渉はしてくるけどね…それは涼華次第なんじゃね……」

「なにそれ…逆ギレとかされたりしないよね……」

「まぁ、後ろは恐い人だからね…大丈夫だよ……」

杏奈はここいらの売春グループの仕切りを任せられているらしい。
後ろと言ったのはおそらく反社の人のことなんだろうけど深く聞くのはやめておいた。
それでも、今は杏奈達とつるんでる方が楽だった。
あまり家に帰りたくなかったから…。

私も商品として参加することが決まると、グループLINEに招待された。

【バイトやめよっかな…】

その夜遅くに帰宅すると姉がいた。
姉は大学生になってから独り暮らしをしていたのに、どうやら母親が泣きついたらしい。
無視して2階に上がろうとすると呼び止めてられてしまう。

ソファに座るとまるで母親の代弁者のようにお説教が始まった。

【はぁ…めんどくさ……】

まるで、面と向かって言えない母親の代弁者気取りに思えた。

「別にお姉ちゃんがいるんだから、私なんてどうなってもいいでしょ……」

私は鞄を掴んで再び家を飛び出した。

「待ちなさいっ…まだ話終わってないよっ……」

私は杏奈に電話をかけた。

「ねぇ、なるべく早く仕事回してよ……」

「ヤる気まんまんじゃん…OK……」

それからしばらく家に帰ることはなかった。
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