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濡華 ~妹、涼華の過去~
第3章 夏休み
それからは慌ただしかった。
母親は外に出ることに怯えるようになってしまったが、私の引っ越しに必要な買い物などに一緒に出掛けてくれた。
髪の色は父親に言われて黒く戻した。
それは別に拘りではなかったので問題ない。
その父は変わりなく毎日会社に行っている。
仕事にまで影響しなかったのは良かったと素直に思っていたが、そんな簡単な話ではないと姉に言われた。
それでも父は家族の為に働いてくれているのだと。
これからは身体を売ることは難しいだろう。
未成年の私は感謝するしかなかった。
姉は私の行き先が決まると一人暮らしのマンションに戻っていった。
別れ際に言われた一言を私は忘れることはない。
「これからは真面目に生きなさい…それまでは家族と会えないと思いなさいよ……」
【ずっと真面目に生きてきたよ…真面目って何よ……】
結局、姉は自分の物差しでしか他人を見れないのだ。
姉のお眼鏡に叶うまで会えないのなら、姉とは一生会えないのだろう。
姉は私が別の高校に入る為、家を出る時も顔を出さなかった。
母親はまた泣いた。
それでも涙を溢しながら笑顔を作って抱きしめてくれた。
父親はもうずっと長い間笑顔を見ていない。
それでも最後は…「元気でな…」…と声をかけてくれた。
私はまだ辛うじてこの両親の娘でいられたようだ。
「じゃね……」
私は迎えにきた職員さんの車で17年間暮らしてきた家を後にした。
しでかしてしまったのは私なのだ。
誰を恨むでもない。
車の後部座席から見慣れた街を眺め続ける。
実感がわかないだけなのか、感傷に浸ることもなかった。
「大丈夫?…」
助手席から母親と同じくらいの歳と思われる女性の職員さんが声をかけてきた。
「はい、大丈夫です……」
普通のトーンで返事をした。
「遠いから眠くなったら寝ていいからね…」
「ありがとうございます……」
杏奈や他の友達がどうなったかは知らなかった。
ただ、私同様この町からは姿を消していた。
そして、芹沢は学校を辞めたらしい。
杏奈が道連れにしたのだ。
こうして私の高校二年生の夏休みは終わった。
住み慣れた街を離れ高速に入ると、いつの間にか後部座席で寝息を立てていた。
母親は外に出ることに怯えるようになってしまったが、私の引っ越しに必要な買い物などに一緒に出掛けてくれた。
髪の色は父親に言われて黒く戻した。
それは別に拘りではなかったので問題ない。
その父は変わりなく毎日会社に行っている。
仕事にまで影響しなかったのは良かったと素直に思っていたが、そんな簡単な話ではないと姉に言われた。
それでも父は家族の為に働いてくれているのだと。
これからは身体を売ることは難しいだろう。
未成年の私は感謝するしかなかった。
姉は私の行き先が決まると一人暮らしのマンションに戻っていった。
別れ際に言われた一言を私は忘れることはない。
「これからは真面目に生きなさい…それまでは家族と会えないと思いなさいよ……」
【ずっと真面目に生きてきたよ…真面目って何よ……】
結局、姉は自分の物差しでしか他人を見れないのだ。
姉のお眼鏡に叶うまで会えないのなら、姉とは一生会えないのだろう。
姉は私が別の高校に入る為、家を出る時も顔を出さなかった。
母親はまた泣いた。
それでも涙を溢しながら笑顔を作って抱きしめてくれた。
父親はもうずっと長い間笑顔を見ていない。
それでも最後は…「元気でな…」…と声をかけてくれた。
私はまだ辛うじてこの両親の娘でいられたようだ。
「じゃね……」
私は迎えにきた職員さんの車で17年間暮らしてきた家を後にした。
しでかしてしまったのは私なのだ。
誰を恨むでもない。
車の後部座席から見慣れた街を眺め続ける。
実感がわかないだけなのか、感傷に浸ることもなかった。
「大丈夫?…」
助手席から母親と同じくらいの歳と思われる女性の職員さんが声をかけてきた。
「はい、大丈夫です……」
普通のトーンで返事をした。
「遠いから眠くなったら寝ていいからね…」
「ありがとうございます……」
杏奈や他の友達がどうなったかは知らなかった。
ただ、私同様この町からは姿を消していた。
そして、芹沢は学校を辞めたらしい。
杏奈が道連れにしたのだ。
こうして私の高校二年生の夏休みは終わった。
住み慣れた街を離れ高速に入ると、いつの間にか後部座席で寝息を立てていた。