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眩惑のディナーショー
第6章 五人目の御客様…どうぞ
「ぼーや! ちょっと一杯付き合ってくれないか?」

「え!?」

帰宅準備でデスクの上を片付けていると突然そう声を掛けられた。

海外から先月来たばかりの異国の上司、イブラヒム=アサド・ムスターファ。

不況のため倒産寸前のこの旅行会社を社員ごと買収されてホヤぼーや達はある意味命拾いしたのだが……

経営立て直しの為にやって来た異国の専務の色男ぶりに会社の女性社員達は浮き足立っていた……。

そんなアサドから名指しで声を掛けられて思わずぼーやは辺りを見回す。

「あたし一人ですか!?」

周りに人は残って居らず、ぼーやは驚いた声を上げていた。

「そうだ、お前以外に誰がいる?」

そう言いながらアサドは白い歯を見せて軽く笑う。

茶褐色の肌に白いYシャツ。グレーのベストが何だか渋い。

誘いを断れぬままドキドキしながらぼーやはアサドと二人でエレベーターに乗り込んだ。

背後に立ちアサドの逞しい後ろ姿をじっくりとぼーやは眺める。

男らしい背中。日本人には中々着こなせないスリーピースのベスト、後ろのサテンの生地にさえ品格を感じぼーやはほぅ… っとため息を吐いてうっとり頬を染めた。

丁寧に磨かれた革靴の足元から折り目のしっかりついたズボンを辿り、高い位置できゅっと締まった形のいい尻に思わず目が釘付けになる。

上着を手にしたアサドはネクタイを少し弛めながらふと後ろを振り返り笑った。

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