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眩惑のディナーショー
第8章 七人目の御客様…どうぞ
「ああ、払えない!? それはいったいどういうことだ!」
厳つい形相をした強面の男達を目の前にして、一人の女が身を震わせていた。
銀座のカウンターバー、“月の光”
そこのママをしていた月(つき)はこの不況の煽りを受けて抱えた借金、二億四千万の取り立てに来ていた闇金に必死に頭を下げる。
「…っ…ざけんじゃねぇ!頭下げて借金帳消しになるわけじゃねえんだよっ」
カウンターに並んでいた酒のボトルを叩き割られ、月は悲鳴を上げる。
ただひとり…カウンター隅にいたサングラスの男を除いて店の客は嫌な予感を察知し、皆そそくさと金を置いて立ち去っていた──
割られたボトルの酒が床を濡らす。飛び散った酒はカウンター隅にいた男の客のスーツに染みを作っていた──
「すみませんっ返済はもう少し待ってっ…」
「これ以上は待てねぇな、あん? あんた女なんだ……こんなチマチマ稼ぐよりもっとてっとり早く儲ける方法があるだろうがよっ」
取り立ての男が臭い息を吐く顔を近づけてニヤニヤと笑い覗き込む。
「売れよ…その身体をよっ…いい店紹介してやっからよ、へへ。あんた勤めたら通ってやってもいいぜ? 俺等がよっ」
「──…っ」
月のブラウスの襟元に指を掛けると取り立て屋は服の中を覗くような嫌らしい視線を向けていた。
月は咄嗟にその胸元を庇う──
それと同時に隅から声が掛けられていた…。