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眩惑のディナーショー
第8章 七人目の御客様…どうぞ
「さて…飲み直すか…」
静かになったカウンターバーに男は腰掛け直した。
「あ、あの…あなたは一体──…」
月は怯えながら尋ねていた。ただ者ではないことはわかっている。三億もの借金を今度はこの男に支払わなければならないのか……
そう戸惑う月に男はサングラスを外した顔を向けて優しく笑みを見せていた。
茶褐色の肌、鍛えられた肩幅。端整な顔だちは笑みを浮かべると案外人懐っこい印象も与える。
空のグラスをカランと回すと男はそれを月に渡す。
「ママ特製のとびっきりに旨い酒を入れてくれ」
「とびっきり…」
「そ、…一杯三億円のバーボンロックを頼むよ」
笑って口にしながらウインクを返す。
月はその笑みに抱えていた不安を全て忘れさっていた。
「あ、あのっ…あたしお手製のお酒には一晩のお付き合いもセットに…っ…」
大胆な言葉を発してほんのり赤い顔を俯かせた月の光のママを見つめ、男は少し驚いた顔を向けると直ぐにその黒い瞳を緩めていた。
カウンターに置いたママの手に男の大きな手がそっと重ねられる──
「あなたは何者なの……」
覆い被さる影にうっとりした視線で月は小さく尋ねる。
男は、さあ…。そう短く返すと顔を傾けて口を開いた。
「ただの砂漠の王子様ってところだ……」
ふっと笑う唇から熱い息が漏れる。
「それより三億のバーボンセットにはこんな味見も含まれてるのかな」
囁いた唇は重ねられたまま、ねっとりとした大人の口付けをじっくりと味わい続けていた……
〜ちょっとした大人の事情〜
茶褐色の王子&月の光