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眩惑のディナーショー
第14章 福袋[竹]
こ存じ伝統格闘技パンクラチオンが始まっていた。

「俺を倒したら多少の罪は大目に見てやる」

ニヤリと笑うザイードは日頃から自分と対戦を避ける部下のせいで少々退屈を抱えていた。そのせいか今はとてもイキイキした目をしている。

「手足の二、三 本折るくらいで我慢してやる…こいっ」

「ひいっ…そ、それなら普通に捕まえてくれっ」

男は泣きそうな顔を向け、ヤル気満々のザイードの前に膝をついて祈るように地に頭をつけて懇願していた。

欲求不満を抱え、ザイードはまた不戦勝の身体を持て余す。

「仕方ない…」

ザイードは肩からため息をつくとティファニーを振り向いた。

「女──…今夜の寝屋はお前が俺の相手をしろ」

「えっ!?」

「嫌か」

「いえっそんな嫌とかっ…」

王子ザイードの寝屋の指名に頬を染めて焦る。

「おお、パンクラチオンだっ…族長はベッドでパンクラチオンをされるつもりで居られるぞ…」

部下達はヒソヒソとそんな会話を交わしている。

「ぱ、パンクラチオン…」
密かに怯えて呟くティファニーの肩にザイードは手を回した…

「気にするな…女向けのソフトなパンクラチオンだ…痛みは少々伴うかも知れんがな……」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべザイードは妖しい言葉を口にする。

「痛いのは嫌か…だが痛みは快楽と背中合わせだ──…直ぐに気をやる程に悶えさせてやる…」

「…っ…──」

「案ずるな…これもお前のカダル──…逃げられない運命だ…お前はただ陽の神に拝んでいればいい……」

耳元に唇を近付けて低い声でそう囁くと、抱いた肩を引き寄せながら大きなラクダの上に抱え上げられる──

そんな声音にぞくりと鼓膜を震わせて、ティファニーはただ頷くことしかできなかった……。
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