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眩惑のディナーショー
第15章 福袋 [梅]
「わ、若っ!?」

ぴよは密かに頬を引きつらせる。

どう見ても、あちゃらの世界の兄さん達だ。ぴよは焦りながら近付いてくるグラサンの男から然り気無く後ずさった。

「あれ、財布要らない?」

「い、要らなくはないけどっ…」

お礼をせびられても困るしっ…どうしようっ!?

必死に何かを考えるぴよの表情に貴志は気付いた。

「ああ、もしかして礼金でも集(たか)られると思った?」

「──…っ…」

貴志はずいっと顔を近付けるとグラサンをずらしてニヤリと妖しい視線を覗かせる。

あらいやだ。
なにこの美人
さんは?

やけに艶やかな色気が漂う。中途半端に伸びた髪を後ろで一つに束ね、こめかみから下がる溢れ髪がやけに色っぽかった。

「集られるなんてっそ、そういう訳ではっ…アルケレド……」

ぴよは怯えながら本音を小さく呟く。そんなぴよを貴志は思わず吹き出しながら笑っていた。

「さすがに45円の賽銭を大事そうに握り締める女からは集るなんてできねえなっ…」

「──…え!…」

腹を抱えた貴志に言われ、ぴよは思わず赤面した。

「み、見てたのっ!? いつからっ!?」

「………」

ぴよは混雑した場所では小銭を取り出し難いだろうとたしか、神社の鳥居を潜る前に財布から45円をしっかり数えながら抜きとった筈だ。

いつからと聞かれて貴志は何故かぽりっと頬を指で掻く。

「あ〜…いつから…って聞かれると……」

「………」

何故か困ったように目を泳がせる。貴志はそれとなく小さく咳払いをして見せた。

「いつからって言うと…ずっと見てた……かな…」


「………え」

聞き返すように耳を近付けたぴよから顔を背ける。そんな貴志の顔は微かに赤く染まっていた……。


〜若頭が見つけた45円の縁結び〜

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