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眩惑のディナーショー
第15章 福袋 [梅]
うるさいな、人が真剣にお願いしてるのにっ

ぴよはそう思いながら眉間にシワを寄せて振り向いた。

「──…っ…」

鮨詰めだった筈の人垣は、何故か自分も加えて避けるように人の輪になっている。

ぴよは、えっ!?と辺りを見回した。

「おい、これあんたのだろ?」

「えっ!?」

聞いてきた男の指の指す方を見れば、腕を捻り上げられた男の手には確かにぴよの財布が握られている──

「ああっあたしの財布っ!」

ぴよが叫んだ途端に男はしまったと形相を変えて捕われていた腕を力一杯振りほどいた。

「逃がすかボケッ!」

足を引っ掛けられて勢いよく躓いたスリの男から財布をむしり取る。その周りを厳ついスーツ姿の男達が取り囲んでいた。

「おう!ここは鬼頭組の縄張りだってわかってんのかっ!?若の手を煩わせやがって」

「人のシマで勝手に稼いでんだっ覚悟できてんだろうなっ?」

スリ犯は蹴りを入れられ悲鳴を上げている。

「貴志さん、あとは自分等がっ」

「ああ、武さん頼む」

財布を取り返した若い男に厳つい強面の男達はそう言ってスリ犯を抑え込んでいた。


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