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眩惑のディナーショー
第16章 花魁道中
時は明治初期──

花の街の吉原に、それはそれはじゃじゃ馬な花魁が居りました。


「菖蒲っ! そんなんじゃあんたを水揚げしてくれる旦那なんて一向に現れちゃくれないよっ!? たく。着物の裾をそんなに捲り上げて恥ずかしいったらありゃしないんだからっ…」

「ええ〜…でも、お多江さん見て! 出目金、四匹も掬っちゃったよ」

この界隈はいつも賑やかだ。赤線宿が立ち並ぶ通りはいつも出店が軒並みに商売をし、番頭のお多江に叱られながらも菖蒲は出店の金魚すくいを楽しんでいた。

小さな禿達にせがまれて、菖蒲は尚も調子に乗って金魚すくいを始める。

着物も襦袢も太股まで捲り上げた菖蒲の姿に町人達は指を指して笑っていた。

「菖蒲! いい加減におしっ…もう時期、亜羅舞って外国から九重姉さんの処へ大事なお客様が見えるんだよっ!九重姉さんに恥を掻かすんじゃないよ」


「ええ〜…」

菖蒲は口を尖らせていた。九重姉さんには菖蒲も禿の頃から可愛がられている。

これを仇で返す訳にはいかないと菖蒲はその場から腰を上げていた。

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