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眩惑のディナーショー
第17章 *読者様感謝祭*
灰色の雲が空を覆う。
熱い砂漠の国から暫しの休息の地へと連れて来られた愛美は、急な雨に晒されて、湿林の生い茂る緑の中を急ぎで駈けていた。
「大丈夫か?もう少し行けば先に雨宿りできる場所がある」
アサドは後ろを振り返り愛美に声を掛けた。
国務で共に出掛けることもままならないザイードに代わり、愛美のボディーガード兼付き添いとして国王の私有地であるこの小さな島へバカンスに訪れた早々、二人は悪天候に見舞われてしまっていた。
「ふう…南国特有のスコールだな、早目に上がればいいが……」
大きな洞穴に辿り着き、暗い空を覗いて眉を潜める。
アサドは雨の露を払いながら一息ついて愛美を見た。
「拭くものを持ってたか」
「うん。一応、ハンドタオルだけど」
ははっ、と笑って顔の水滴を拭き取る愛美を見てアサドの視線が止まっていた。
「なに? 使う?」
「いや…俺はいい…」
見つめるアサドに愛美はハンカチを差し出す。だがアサドはそれを断ると愛美から視線をそらし、ゆっくりとその目を游がせた。
白いブラウスが濡れて愛美の肌にピッタリと貼り付いている……。
そして胸元は当たり前のように下着が透けて見えていた。
アサドはさりげなく口元を隠し愛美に背を向ける。
愛美はそんなアサドの仕草に疑問を浮かべながらも、濡れた髪から落ちる雫をハンカチで拭っていた。