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神様のいない世界
第3章 境遇
「そうか、なら和穏に聞くからいい」


そう言った宗高は、善の胸ぐらを掴んだまま部屋を出た。

急な物音に何かと上を見上げた男達は、キレた宗高と引っ張られ怯えた善の姿が目に飛び込むと、そのまま善を階段から突き落としたのだ。

高さがあるわけでも無いが、宗高は後ろ向きで突き落とした善が、1回転がって下まで落ちるのを冷たい表情で見下ろしてから部屋に戻って行った。


「善、大丈夫か?何があった?!」


相田がすぐに駆けつけると、善は痛みに顔を歪ませながら笑って言う。


「大丈夫っすよ、ちょっと……機嫌を損ねたって言うか……」


叫びもあげずに転がり落ちたのは、善が宗高の機嫌を損ねたのだと分かっていたから。階段から突き落とされただけで済んだ事に実は安心していたのだ。

多少の打ち身と擦り傷はあるが、対した事は無い。

ただ和穏に、助けを求める様な表情と声で名前を呼ばれたのは微かな優越感があった。


和穏からしたら『実行犯』なのに、自分の名前を覚えて、自分に救いを求めたのだから。
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