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マスター・ナオキの怪店日記
第13章 冥途の土産
「ありがとうございます、マスター」
尚樹の涙を受け止めた信一が、今度こそとスツールから立ち上がった。
「そろそろ行かなければ。気持ちが残らないよう、すぐにあちらに行きます」
ドアの前まで行くと尚樹を振り返り、
「父と母がこちらへ戻って来るのにもう少しだけ時間がかかると思いますが、どうかこれからも二人と仲良くしてやってください。よろしくお願いします」
深々と頭をさげる信一。その頭をあげ、穏やかな微笑みを浮かべたまま、足元から薄くなって、霞のように消えていく。そしてドアを開けたわけではないのにドアが軋む音がして、その余韻をいつまでも残した。
その音は、まるで今までの出来事と現在を区別するかのように空気を一新させた。
うつろな目でカウンターの上の二つのグラスを眺めてみる。最初はぼんやりとしていた意識が一気にクリアになった。なぜなら、二つのグラスとも、中身が残っていたからだ。
ジンジャエールもウィスキーも、信一が最後の力を振り絞って体の中に吸収した証しがそこにあったのだった。
尚樹の涙を受け止めた信一が、今度こそとスツールから立ち上がった。
「そろそろ行かなければ。気持ちが残らないよう、すぐにあちらに行きます」
ドアの前まで行くと尚樹を振り返り、
「父と母がこちらへ戻って来るのにもう少しだけ時間がかかると思いますが、どうかこれからも二人と仲良くしてやってください。よろしくお願いします」
深々と頭をさげる信一。その頭をあげ、穏やかな微笑みを浮かべたまま、足元から薄くなって、霞のように消えていく。そしてドアを開けたわけではないのにドアが軋む音がして、その余韻をいつまでも残した。
その音は、まるで今までの出来事と現在を区別するかのように空気を一新させた。
うつろな目でカウンターの上の二つのグラスを眺めてみる。最初はぼんやりとしていた意識が一気にクリアになった。なぜなら、二つのグラスとも、中身が残っていたからだ。
ジンジャエールもウィスキーも、信一が最後の力を振り絞って体の中に吸収した証しがそこにあったのだった。