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マスター・ナオキの怪店日記
第14章 今宵もグラスを傾けて

 お盆を過ぎても暑さは人々の体を疲れさせ、おかげでビールの消費量は毎日絶好調で、バー・タイニーキャッスルにも売り上げという潤いをもたらしている。
 長澤信一が尚樹に別れを告げに来て天へと昇ってから、二カ月近くが経っていた。
 新盆を忙しく過ごしたであろう信彦と照美の事を想うと、目頭が熱くなる。
 彼らに・・信彦、照美とどんな顔で相対すればいいのか。考えると少し気が重い、というのが尚樹の正直な気持ちだ。
 もしかしたら彼らは、息子・信一が自ら報告、というか挨拶に来たと知らないかもしれない。いや、見える彼らならやはり知っているのかもしれない。
 どっちにしても、まず始めになんといって声をかけたらいいのか。
 その時はいつ来るのだろう。
 不安が入り乱れる尚樹の心をよそに、「その時」は突然やって来たのである。



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