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マスター・ナオキの怪店日記
第1章 BAR・tinycastle
カシャカシャカシャ・・
今日も尚樹の振るシェイカーの音が、さざ波の様な賑やかさに花を添える。
カクテルグラスに注がれる淡いピンクの液体を見て若い女性の二人組は、ふんわりとした声をあげる。
「うわぁキレイ!」
カクテルグラスの縁に小さな蘭の花を添えて女性の前にスッと置く。さらにニコリとほほ笑めば、尚樹特製カクテル「ヴィーナス」の出来上がりだ。
「相変わらず、若い女性客獲得に力を注いでるねぇ、マスター」
カウンターの端でニヤリと口をねじ上げる常連客のゴリさんが尚樹をからかった。
「そりゃねぇ、こういうむさくるしいオッサンばかりがバーの常連じゃあないんだよってとこを教えてあげないとね。それにほら、マスターがそこそこ若いイケメンだから、それにふさわしいお客様を獲得しないと」
カラのロックグラスをつかみ取り、オーダーされてもいないのに、バランタインの12年物を注いで戻す。高い酒飲ませやがって、と常連オヤジに鼻を鳴らされながらも、涼しい顔で尚樹はグラスを洗い始めた。