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マスター・ナオキの怪店日記
第1章 BAR・tinycastle
「BAR tiny・castle」は、バーテン歴20年の節目に堀川尚樹が開いた自分の店だ。
タイニーキャッスル、小さな城という名前は、小さな店でも立派な俺の城だという意味を込めて付けた。
二十歳から20年。ちょうど40歳で開いた店も、わりかし順調に5年やってきた。いよいよ6年目に入り、常連客と自分で名乗りを上げてくれる客も70人を超えた。
席数15ほどの小さな店ながらこれだけ常連客が付いてくれたことは、尚樹の努力が報われたからだと、自分で自分を労っている。
横浜の、古き建物や銀杏並木のあるオフィス街の片隅にある店に訪れる客は、サラリーマン、OLが半分くらい。あとの半分の多くを占める、近隣の飲食店で働く人たちが足を運んでくれるのも尚樹にとっては嬉しい。観光客もぽつぽつ来てくれる。
加えて最近目につくようになったのが、近隣住民だ。タワーマンションができたこともあって、徒歩圏内で飲める店を探して彷徨う住民たちが、この店をみつけてくれたのだろう。
そういった様々な客達を迎え入れながらバー・タイニーキャッスルは、今宵もオレンジ色の淡い光を軒先に灯しながら、シェイカーの音を奏でている。