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マスター・ナオキの怪店日記
第7章 長澤夫妻の告白
 あ、前置きが長々と続いてしまい申し訳ないです。ここからが本題です。
 こちらに移り住んでからも、出くわしてしまう事がありました。どこに行っても袖すりあうは多少の縁、ってことですかね。
 初めて会ったのが昨夜こちらへ来た方です。
 駅向こうの飲み屋が並ぶ通りでたたずんでいて。声をかけられてしまいました。どこかいいバーはないかね、と。話を聞くと、昔バーテンをやっていらしたそうです。店も順調だったのに、突然の病で死んでしまった・・
 今までは客をもてなす立場だったから、死んだあとはゆっくりとカウンターでグラスを傾けたいんだ、と笑っていました。
 そこでマスター、あなたのお店を紹介したんです。いいお店ですよ、素敵なマスターですよ、もちろんカウンターもあるし。たぶんマスターなら話し相手もできるようになるはずですよ、ってね。
 なぜならあなたにはその才能が隠れているから。今まではその才能を引き出してくれる人がいなかったから眠ったままでいたのだけど、私たちが見出してしまいましたからね、大変申し訳ないんだけど。
 お酒を飲みながらただ話を聞いてあげればいいんです。ここに来る人達は、いえ霊たちは、酒好きで、死ぬ前にもう一杯飲みたかったなぁという、まったく悪気はない人たちです。お金は持ってないけど、お酒を出しても減りませんから。なんといっても彼らには、飲むための臓器が無いのですから・・




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