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マスター・ナオキの怪店日記
第8章 いよいよ始まった、ご来店・・

 新しい年が幕を開けた。
 大晦日から正月三が日まで休業し、二日三日と伊豆の温泉旅館で志穂と過ごし、湯と志穂のぬくもりで心も体もリフレッシュできた。
 休み明け初日は、年末年始の休みに飽き飽きしていた常連客でにぎやかな幕開けとなった。
 毎度さん、ゴリさん、三島さん。いつもの仲間たち、普段と変わらぬ光景。だけと一つだけ、違う事がある。
 カウンター越しに見えるはずの、長澤信彦と照美夫妻の笑顔が無いことだ。
 年の暮れのあの日、開店前に訪ねてきた二人はとんでもなく不思議な話を尚樹にした。俺も見える人間だと、これからは酒に未練を残した霊を迎え入れてほしいと、簡単には理解できない事を真面目に説明していった。
 正直言って、霊が見える夫婦に対して気持ちが引いた。だけど嫌いになったわけじゃない。
 もしも彼らが店に来なくなってしまったら、そう考えると寂しさと同じくらい不安も感じる。だって、もしもの時に誰に相談すればいいんだ?尚樹の話を真面目に受け取って聞いてくれる人が周りにいるとは思えない。志穂にでさえ、打ち明けられずにいるのに。



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