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マスター・ナオキの怪店日記
第8章 いよいよ始まった、ご来店・・
「今夜は久しぶりに楽しかったなあ。マスターありがとう」
カクテルとバーボンのストレートの二杯で男は切り上げた。
「こちらこそ、楽しんでいただけてよかったです。また・・いらしてください、といっていいんでしょうか?」
心にもない事、かもしれない。霊の客では商売にはならないのはわかっているし、ビビる気持ちもあるのだが、つい口をついて出てしまった。
尚樹の心を察してなのか、それとも違う意味があるのかわからないが、男はこう返す。
「また来られるかどうかはわからないんだ。もしうまく成仏出来たら、もうこの世をさまようことはないだろうから」
なるほど、と尚樹は肩をすくめる。
「この店は繁盛する。今夜の酒代も入るはずだから、安心して商売をするといい。では、おやすみなさい」
スッと立ち上がったかと思うともうドアの前にいる。
押し開けたドアから漏れた暗闇の中の明かりに照らされた男の顔は、まるで血の通っている人間のように、つやつやとしている。幽霊とは思えない穏やかな笑顔だった。