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マスター・ナオキの怪店日記
第11章 4人目の幽霊様

 霊が来店する。
 奇妙な接客をしなければならない事への心のわだかまりは、かなり薄くなっていった。
 開店の準備をしながら今日は来るのだろうかと頭をよぎることが増えていく。もちろん、ご来店をお待ちしていますという訳ではないけれど、自然と思い浮かべてしまう。
 そして尚樹は思う。人生は、いつまでも自分の思い通りに続くわけではないのだと。
 明日やればいい、今度行けばいいと思っていたことが突然できなくなる。あの時やっておけば、昨日行っておけば、そういう後悔を抱えたまま、この世から去ることになった人々。ほとんどみんな、そうなのかもしれない。
 最後にもう一杯酒を飲みたかった、もう一度バーのカウンターでグラスを傾けたかった、そんな男たちと向き合ったことで、尚樹の中でも生きている時間を大切にしなければという気持ちが大きく膨らみ始めた。
・・人生の設計図でも作ってみるかな・・
 開店を知らせる札をドアにかけながら、日に日に明るさを増す夕暮れの空を見上げた。



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