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闇に蠢くツチノコ
第2章 幹事がいない同窓会
 あの日以来僕らは会ってはいなかった。



「チッ!何だ、幹事はまだ来てねぇんか?」
僕ら三人を見下ろすケイタは舌打ちとは裏腹に笑顔すら浮かべている。
「はぁ?幹、、」
その中の一人 見上げるカツの言葉を、隣にいたシュンが阿吽の呼吸で遮った。
「おう!幹事ならまだ来てねぇよ。ってか、ケイタ仕事帰りか?」
ケイタは薄汚れたニッカポッカの姿。そう鳶職人だ。
「まぁな!おっ、リョウスケェ!久しぶりだなぁ、、」
「あぁ、」
リョウスケ。つまり僕は軽く手を挙げて応える。
ケイタが胡座をかけば、カツがテーブルに用意された瓶ビールの栓を抜き空のコップに並々と注ぐ。
「まっ、お疲れ!」
「サンキュー!おっ、寿司かぁ、確かに高い会費だけあるな!」
おしぼりで軽く両手と顔を拭いたケイタは早速大トロへと手を伸ばせば、素手で?と、シュンは怪訝そうな表情を浮かべながらも口を開いた。
「それにしても、あいつが俺らを呼び出すなんて、ひょっとして初めてなんじゃないか?」
そのシュンもケイタに、まっ、と、ビールを注がれながらニヤッと笑顔に変わる。
「まっ、、そこは奴なりの、、エリートなりの葛藤でもあるんじゃねぇか?」
ケイタは相変わらず唾を吐き捨てながらも続ける。
「まっ!要は自分勝手って事だよな!なっ!なっ!なっ!」
早速のその場にいない人の悪口。ただ僕には陰口とは思えない。
「まっ、そういう事だな!」
その波に乗ったのはカツだけだ。
「しかし、あれだな、ケイタの口から葛藤って、お前いつの間にそんな言葉を知ったんだ?随分とお利口になったもんだ」
アハハ!と笑い声を挙げるカツは空手二段の猛者。車の製造業務に従事しているせいか、拳ならぬ指先まで脂が馴染み。更に肩幅が広がった気がする。
「はぁ?テメェ!ぶち殺すぞ!」
病的とも言える短気のケイタとはよく些細な事が原因で殴り合いの喧嘩を披露していた。もちろんカツ曰く ちゃんと手抜きをしているそうだ。
「ケイタ!お前さっきから声がデカいんだよ!」
間髪入れずシュンが隣テーブルの声を代弁すれば、僕はすみませんね、と頭を下げるのはいつもの事。
シュンは中学を卒業して役者の世界へ身を投じ現在も修行中。だからか、やたらと滑舌いい美声は不快な想いをさせないから不思議だ。
「うるせぇ!こいつは生まれつきだ!」
どちらも天性ならは、やっぱり神様なんて不公平だと今更思う。
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