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雪エルフのメイドはホムンクルス執事と
第5章 雪エルフの魔女、ソーニャとルチアの再会 ※別・姉妹作の主人公
1
 執事が駆けつけるのは、間に合わなかった。
 とっくに現場は全滅。
 別の誰かがゾンビとスケルトンを片付けて、威力の名残のような冷風が吹いていた。

「なんだ、せっかく起こしに来てやったけれど。もう起きてたのか? っても、来るのが遅かったみたいだけど。まさかこんな魔族どもの手が早いなんて」

 紫色のトンガリ帽子とマント外套は「雪魔法の魔女」の証だった。彼女は雪エルフの魔法使いなのだ。しかも金色の留め金は最上位クラスであることを示している。外見は若かったが、それすら魔法を極めた長生の術による成果だった。
 彼女の紫の瞳は、研究開発に関わったホムンクルス技術にも影響を残している。
 すぐ横で、十歳あまりの男の子がいる。ユーリの母親と異父姉は雪エルフだから、本能的に親近感や身内意識でも湧いたのかもしれなかった。

「ソーニャ」

「どうせだったら、もう五分分くらい早かったら良かったのに。おかげでくったくただよ! 私ってか弱いし、体力あんまりだから」

 そんな言い草はあながちに嘘ではない。魔術の技量は流派で最高度に洗練されてはいても、魔法力の容量やパワー・スピードはイマイチ。競技選手や学者・研究者として優秀でも、必ずしも喧嘩の強さや犯罪の悪知恵が圧倒的とは限らないのと同じなのだった。
 だとしても、やはり凡人とは比べものにならない。
 冷気の魔法で切断破壊や局部凍結・粉砕されたゾンビとスケルトンの残骸は、二十体近く転がっている。

「ああっ! ソーニャさん! うちの息子が!」

 キアラと一緒に執事の後から追いついてきたユーリの母は、嬉しげな驚きと安堵の声を上げる。雪エルフ部族の間ではソーニャは伝説的な「古老」の一人で英雄なのだから、ユーリの父親のドワーフ準男爵家にとってのホムンクルス執事と関係が似ていなくもない。
 しかも面識があるらしい。
 ソーニャは二秒くらいで思い出して記憶から当たりをつけたようだった。

「なんだ。お前の子供だったのか、ルチア。薬草学と回復魔法の修行はどんなものだね? 私は人を治すのは苦手なんだ。手当てしてやってくれないか?」

 二人の母親の名前はルチア。遠い過去にソーニャと出会ったときには、尼僧院附属学校で薬草学と、特殊な加護・恩寵と奇跡による神学校系の回復魔法流派の初等学生だったのだ(学ぶ者の大部分は初等・中級止まりであるけれども)。
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