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雪エルフのメイドはホムンクルス執事と
第4章 ホムンクルス執事が目覚めたら
「あら、執事さん。その、ちょっとわけがあって」
作り笑いの顔の、麗しい口元は死闘で頬や胸まで血塗れになっている。食い千切るだけで飽き足らずに、噛みつきまくった疑惑すらある。
キアラは娘として、ハンカチを取り出して顔の汚れだけでも拭ってやる。そして執事がニヤリとしていたのも目敏く見とがめた。
(ふーん、コイツってそういうふうなんだ? そんなわかりやすい表情するんだ、ふーん?)
初々しい娘は非難の横目にジットリと目を細めて、この不届き者を蹴り飛ばすかどうか一瞬だけ迷う。
だがそれどころでない。
「弟を助けないと。あっちの先の角を曲がったところだから、執事さんお願い」
不逞な執事を促して先に行かせることにする。まだ騒乱中のようだから近づけばわかるだろうし、無理に同行しても足手まといになるかもしれない。まずは弟を助けるのが第一義だけれど、他の人たちも助けなくてはいけないのだし、そのためには彼に戦って貰うしかない。
キアラは走り去る彼の後ろ姿を見送りつつ、自分が着ていたメイド服のエプロンを外して母に「応急処置」させる。他の人に見られたり会う前に最低限の身繕いは絶対に必要だから。
5
母娘が二人きりになると、修羅場から生還した母は安堵したのか、涙目でため息してポツリと小声で拗ねたように囁いた。
「誰が「中古ババア」よ。こんな美人だから、あんなゴブリンどものケダモノがあんなふうに。あなただって私の娘なんだから、若かったらなおさら綺麗で当たり前じゃないの。ほんの二十ちょっとしか違わないし、あんただってまだおしめが必要なくせに」
愚痴っぽい言葉に促されて思い出し、キアラは汚れたパンツを脱ぎ捨てる。やっぱり気持ち悪い。
母が取り出して渡してくれたハンカチで汚物の汚れを拭い、二枚のゴブリンの血とキアラの糞尿で汚れたハンカチとパンツは、そこいらの道端に「他人事」としてうっちゃり投げた(私たちには関係ないから!)。
(あー、下からスースーするわー。そよ風の神様って性格を疑うなー)
こうして路上にノーパンになってみると、開放感に高揚感。未知の境地が目覚めてきそうで、変態露出狂になる物好きの気持ちがほんの少しだけわかった。
作り笑いの顔の、麗しい口元は死闘で頬や胸まで血塗れになっている。食い千切るだけで飽き足らずに、噛みつきまくった疑惑すらある。
キアラは娘として、ハンカチを取り出して顔の汚れだけでも拭ってやる。そして執事がニヤリとしていたのも目敏く見とがめた。
(ふーん、コイツってそういうふうなんだ? そんなわかりやすい表情するんだ、ふーん?)
初々しい娘は非難の横目にジットリと目を細めて、この不届き者を蹴り飛ばすかどうか一瞬だけ迷う。
だがそれどころでない。
「弟を助けないと。あっちの先の角を曲がったところだから、執事さんお願い」
不逞な執事を促して先に行かせることにする。まだ騒乱中のようだから近づけばわかるだろうし、無理に同行しても足手まといになるかもしれない。まずは弟を助けるのが第一義だけれど、他の人たちも助けなくてはいけないのだし、そのためには彼に戦って貰うしかない。
キアラは走り去る彼の後ろ姿を見送りつつ、自分が着ていたメイド服のエプロンを外して母に「応急処置」させる。他の人に見られたり会う前に最低限の身繕いは絶対に必要だから。
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母娘が二人きりになると、修羅場から生還した母は安堵したのか、涙目でため息してポツリと小声で拗ねたように囁いた。
「誰が「中古ババア」よ。こんな美人だから、あんなゴブリンどものケダモノがあんなふうに。あなただって私の娘なんだから、若かったらなおさら綺麗で当たり前じゃないの。ほんの二十ちょっとしか違わないし、あんただってまだおしめが必要なくせに」
愚痴っぽい言葉に促されて思い出し、キアラは汚れたパンツを脱ぎ捨てる。やっぱり気持ち悪い。
母が取り出して渡してくれたハンカチで汚物の汚れを拭い、二枚のゴブリンの血とキアラの糞尿で汚れたハンカチとパンツは、そこいらの道端に「他人事」としてうっちゃり投げた(私たちには関係ないから!)。
(あー、下からスースーするわー。そよ風の神様って性格を疑うなー)
こうして路上にノーパンになってみると、開放感に高揚感。未知の境地が目覚めてきそうで、変態露出狂になる物好きの気持ちがほんの少しだけわかった。