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雪エルフのメイドはホムンクルス執事と
第5章 雪エルフの魔女、ソーニャとルチアの再会 ※別・姉妹作の主人公
2
 母のルチアは、ソーニャから雪魔法の奥義の「再結晶の魔術」を同調させて、ゴブリンから乱暴されたダメージを直して貰ったらしい。同じ「雪エルフ」部族であることから適用できるスペシャル技法で、あまり過去にまでは戻せないから、このタイミングでソーニャに再会したのは不幸中の幸運だったろうか。
 それは治癒ではなく「状態復帰」に近く、通常の回復魔法とは別系統の似て非なるものであるらしい。だから記憶と精神ダメージはともかくとして、身体的にはリセットされたらしい。

「汚いのが、ブーッて噴き出したわ。凍ってチリになりながら、あのゴブリンどもの汁が排出。なんか「あうっ!」ってなった」

 ようやく大人の入り口の年頃になっている娘に、ルチアは愚痴ともノロケともつかない調子で話す。

「それから、肌とかも、ちょっと若返った感じ?」

 あいにくエルフの母娘であった。キエラやルチアの年齢ならば、まだ二人とも十分に若い。ルチアの方が年上に見えるのは事実だとしても、人間なら二十歳中ごろでしかない(エルフの女としては第一段階に成熟したに過ぎず、この状態が長期に維持されながら、老齢に近づけば美しい熟女になっていく)。
 二人の違いは女として「成長段階の差異」でしかないのだけれども(見た目では姉妹とほとんど区別がつかないだろう)、ルチアとしては、どうしても短かかった「最も初々しい少女時代」を思い起こして比べてしまうのだろう。エルフでも個体差があって、長期間を少女である者もいるだけに、ルチアは主観的に「加齢」を気にしてしまうらしい。


3
 そうこうするうち、ユーリが執事から衣装合わせして貰ってやって来た。
 大人用のチェーンメイル(鎖帷子)を、袖だけ長さを調節して簡単な「鎧」にしている。まだ十歳あまりなので、うまい具合に裾は腿まで届いている。首回りまでを覆う革の帽子を被って、皮革の脛当てと手甲まで。
 ファッションではなく、本格的な武器は防げずとも「ゾンビに噛まれにくい」だけでも大きなメリットだろう。呪いが重症化する恐れもあるし、治癒や回復も出来なくはないにしてもひと手間と困難を伴うのだから。
 武器は、短い、切っ先のない斧のような短剣(別にナイフも)。ゾンビには、突き刺す攻撃は効きづらい。この少年に扱いやすく安全なものを選んで持たせたらしい。

「あら!」

 ルチアは女から母の顔になった。
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