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人妻縄人形
第2章 囚われ、淫ら、
 出迎えてくれた社員へのあいさつが終わり、三人が歩き出すと、

「なにがあったの?あれ、部長違うの?」


「うそぅ、うちの部長もいるわね。あの三人は、なに?」


「えっ、あっ、あれうちの社長じゃわ。帰ってきたんや?」


「社長って、九州とか北海道に行ってたっていう?あの社長!」


 ザワザワとしゃべっている声が静香の耳にも聞こえた。


「おと、あっ、社長、九州や北海道に単身赴任なさってたとか、あの、ここにいなかったのはなぜですか?」


 思わず口にしてしまったと、静香は悔やんだが、


「うん、お義父さまでもかんまんよ(かまわないよ)、静香君。まあ、イロイロ事情があってな。乗っ取りを防ぐために、仕方なかったんだがね。まあ、いずれ詳しく話すよ。」


 はい、と小さく静香はうなずいた。
 三人がエレベーターの前に立つと、木谷がエレベーターのボタンを押そうとすると、スラッとしたショートヘアの美女が先にボタンを押し、一樹の横に立った。


「社長お帰りなさいませ。どちらまでいらっしゃいますか?」


「うん、部屋までだな。」


 わかりましたと、その美女が、うなずきながら十一階のボタンを押した。


「あのぅ社長、この女性はどなたです?綺麗な方ですね。」


 静香がたずねると、


「うん彼女は、会社の社長秘書。三沢由布子(みさわゆうこ)君。もうすぐ結婚するんだ。」


 耳元でささやくように言われ、静香は昨夜のシーンが蘇り、身体が熱くなった。


「すごい人なんですね。私にできるでしょうか?」


「大丈夫だよ、俺がついてる。安心しなさい。」


 はい、と小さく答えると、その声が聞こえたのか三沢という秘書が、


「山中さんですか?三沢由布子と言います。社長のご親戚ですか?社長と同じ名字だから、違ってたらごめんなさいね。」


 ズバリ聞かれて驚いたが、


「はいっ、社長の義理の娘です。私の夫が社長の子供と言うことで。」


 そこまで言うと、一樹が、


「由布子君、あまり彼女をイジメないでくれるかな?ところで、矢吹君は元気にしてるかね?まだ、あいさつにもこないんだが?」


 一樹の言葉を聞くと、それまでの仮面が剥がれたように、


「えっ?!あの人、まだ伺って(うかがって)ないんですか!すみません。」
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