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人妻縄人形
第2章 囚われ、淫ら、
 矢吹の変化を一樹は見逃さなかった。


「ふふ、君は婚約者のバッグにも盗聴機を仕込んでたんだ。木谷専務どうだい反応はあるかね?」


 聞かれて木谷は黙って首を横に振った。


「社長、盗聴機とはなんですか?僕とは関係ありませんよ。まして、婚約者の由布子君のバッグにしかけるなんて、とんでもないです。」


 少し動揺した風にまくしたてたが、


「ほう、否定するんだ。じゃあ、こいつはどうかな?ちゃんと答えないと、三沢君との結婚式はあきらめてもらうしかないかな?」


 そう言いながら、矢吹のパソコンを彼自身の方に向けた。
 矢吹の身体が固まった。


「社長、これはだれかのイタズラです。ぼくには関係ありません。」


 そこには、無人の社長室の内部が映しだされていた。


「あらら、こいつも否定するんだね。でも、これを否定すると私は、一番したくないことをしなくちゃならなくなるんだが、構わないかな?」


 一樹の指先が軽くキーボードを撫でた。
 それまでの仮面が剥がれたように、矢吹の顔色が変わった。
 ヒザがガクリッと落ち、肩からさっきまでの威勢の良さが消えた。


「言うことはなさそうだね。私は、これを人事部長と労働組合に見せるつもりだ。残念だよ、会社の将来を任せられる優秀な人材をこんな形で失うことになるなんて、残念だ。」


 矢吹の肩が小刻みに震えはじめ、拳を握りしめた。


「社長、まって下さい。間違いでした。おわびします。だからクビだけは!どうか、お願いします。」


 深々と頭を下げる矢吹を見ながら、


「なにを君は、わびるのかね?さっき否定した事実かね?それとも三沢君にかね?それとも、会社にかね?」


 パソコンの画面には、社長室の盗聴機を集めて動き回っている一樹たちの姿が映っていた。


「社長、二度といたしませんからクビだけは、お願いします。なんでもしますから、会社にいさせて下さい。」


「ふうん、君は自分がなにをしたかわかってないらしいな。いいかね、いま、君は会社に対する明確な背任行為で警察に訴えられる立場にいるんだ。たとえ、他の会社を受けても解雇理由を見たら雇う会社はないぞ!それで、いいのか?それともパリでキャリアをつみたいかね?どっちを選ぶのか君次第だ。」


 それだけ言うと、木谷と三沢由布子を呼んだ。
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