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人妻縄人形
第3章 淫ら咲き人妻秘書
 あぁ、という表情で由布子が、


「えぇ、私の時もそうでした。ビックリしましたよ、あの時は。社員の顔を覚えるんじゃなくて、私の顔を覚えてもらうんですって。ビックリでしょ。うふふ。」


 爽やかに笑って静香を見ていた。


「そうだったんですか、嬉しいけど、少し恥ずかしいです。」


「ふふ、そうね。私もそうだったもの。さあ、みんな見てるわよ。前を見て、笑顔で、会釈されたら返してね。いい、主役はあなたよ。」


 最後は少し悔しそうに聞こえたのは、静香への嫉妬か、あるいは寂しさか?


「さあ、二人ともソロソロ挨拶に来るぞ。少し早目に歩くぞ。」


 一樹の言葉が終わらぬうちに、何人かのスーツ姿の男女がチラホラと姿を見せ始めた。
 社長、と声をかけて来るものがいたが、一樹が軽く手を上げると会釈をして通り過ぎるように離れていった。
 なにか聞こうと静香が口を開きかけたが、由布子が唇に指をあて、微笑むように軽くウィンクした。
 そのフロアーが終わると、下のフロアーでも同じことが繰り返され、二階まで降りた。


「えっ?ここは?」


 いままでのフロアーと違い廊下が中央を貫くのは変わりないが、一番向こう側がガラス張りの広い部屋になっていた。
 そして、その部屋に入ると、明るく広々として、ゆったりとした空間が広がっていた。


「まあ、あそこにかけなさい。木谷君も来てるしね。由布子、いままでありがとう。結婚してからも仕事はやめないんだろう?」


 急に振られて慌てたが、顔には出さずにソファーに腰掛けながら、


「はい、さっきまではやめるつもりでしたが、彼から目を離せなくなりました。だから、会社は辞めません。社長、わがままですけどよろしくお願いします。」


 なんとも言えない微笑みが由布子の顔を包んでいた。


「ありがとう、由布子。パリに行く前に式を上げるんだね。結婚式には招待してくれよ。」


 はい、と嬉しそうにうなずいた。


「社長、矢吹君が全て話してくれました。彼は使われてただけですが、パソコンの情報は全て彼のパソコンの中に入ってました。そいつを逆に利用できそうです。」


 意気込んで話す木谷の話を聞きながら、一樹の表情が面白がっているように変化していた。


「良かった。しかし、矢吹君は、もうやつらには利用価値がないんじゃないかね?」

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