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海鳴り
第2章 過去へ──出会い
電車を降りてバスを乗り継ぎ、細い山道を1時間近く揺られていた。
ようやく目の前が開けてほっとした時、眼下には暗い海が広がっていた。
どんよりと曇った空が今にも雨を降らせそうで、山道の途中から後悔しはじめた律子の心を更に暗くする。
海しかない……
下り坂に差し掛かったバスから見える町の様子は、小さな漁港と小高い山に囲まれた寂れた陸の孤島だった。
1年間だけなんだからきっと大丈夫
じっくり自分を見つめ直すにはちょうどいい
律子は気を取り直し、車内アナウンスで町の名前を確かめて降車ブザーを押した。
波浜町──
「もしかして、新しい先生ですか?」
重そうな旅行カバンを持ち上げて降りる律子を引き止めるように、運転手が話しかけてきた。
「えっ?…は、はい」
「子供が波浜小学校の5年生なんですよ」
「そうですか、宜しくお願いします」
律子は緊張しながら会釈した。
「珍しく若い先生だ、あはは…」
「はぁ…」
「たしか産休取ってる先生が復帰するまでですよね?」
「あ、はい」
「海しかないけどいい町ですよ、あ、スーパーぐらいはあります、飲み屋もね、あはは…」
「そうですか、よかった…」
律子は人当たりのいい父兄にほっと胸を撫で下ろした。
ようやく目の前が開けてほっとした時、眼下には暗い海が広がっていた。
どんよりと曇った空が今にも雨を降らせそうで、山道の途中から後悔しはじめた律子の心を更に暗くする。
海しかない……
下り坂に差し掛かったバスから見える町の様子は、小さな漁港と小高い山に囲まれた寂れた陸の孤島だった。
1年間だけなんだからきっと大丈夫
じっくり自分を見つめ直すにはちょうどいい
律子は気を取り直し、車内アナウンスで町の名前を確かめて降車ブザーを押した。
波浜町──
「もしかして、新しい先生ですか?」
重そうな旅行カバンを持ち上げて降りる律子を引き止めるように、運転手が話しかけてきた。
「えっ?…は、はい」
「子供が波浜小学校の5年生なんですよ」
「そうですか、宜しくお願いします」
律子は緊張しながら会釈した。
「珍しく若い先生だ、あはは…」
「はぁ…」
「たしか産休取ってる先生が復帰するまでですよね?」
「あ、はい」
「海しかないけどいい町ですよ、あ、スーパーぐらいはあります、飲み屋もね、あはは…」
「そうですか、よかった…」
律子は人当たりのいい父兄にほっと胸を撫で下ろした。