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海鳴り
第7章 満ち潮
バス通りを渡り港に着くと、そこはたくさんの人でごった返していた。

水揚げの準備をする人、バケツを持って岸壁に集まる人、足早に突堤へと向かう人、家族連れ、賑やかに走り回る子供達…。

こんなにたくさんの住民がいたのかと、律子はまずそれに驚いた。

皆が浮かれ、祭りのようなその雰囲気に一人キョロキョロするばかりだった。


「先生ほら、翼と武くん」


やっと立ち止まった春子が指差す方向から、こちらに気付いた二人が駆け寄ってくる。


「律子せんせーっ。
……船が帰ってくるよ。
突堤の一番先まで行って父ちゃんの船を一緒に見ようよ、興和丸っていうんだよ」


武は春子が離した律子の手を取り、駆け出した。


「た、武くん…待って…」


武のあまりの勢いに律子も走り出す。


「母ちゃん、僕達も行こうよ」

「アハハ、先に行きなよ、母ちゃんそんなに走れないから」

「ダメだよ、早く~」


武と律子を追って、二人も走り出した。


突堤はすでにたくさんの町民でいっぱいだったが、武の姿を見ると、皆が次々に道を開けた。


「よぉ、武、前に行きな、そろそろ見える頃だ」

「父ちゃんの出迎えか」

「うんっ」

「おーい、カズさんのせがれなんだ通してやってくれ」


ざわついた人混みを縫って4人はなんとか先端に辿り着いた。


「船が見えたぞー!」





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